■ホルヘ・ルイス・ボルヘス
現代が依然ダンセイニ卿を無視しつづけているのは尋常ではない。
悪名高い社会参加の作家や、不安に駆られてサロンを求め、派閥の中で偶像たらんと願う陰謀家がはびこるわれらの世紀において、吟遊詩人の資質を充分に備え、喜々として夢の世界に身を浸したダンセイニ卿の出現は驚くべきことであった。 彼は決して状況から逃避したのではない。ダンセイニ卿は活動家であり軍人であった。しかし何よりもまず彼にとって人生の内面的実体であった、あの魅入られた宇宙、個人の世界の創造者であったのだ。
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■レイ・ブラッドベリ
しばらくの間ダンセイニ卿自身は時代の潮流からその姿を隠していた。そしてあらゆるものの質が変化し、ファンタジー作家が変わりゆく時代、彼は再び我々の中心点に立ち現れたのである。
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■アーサー・C・クラーク
『魔法使いの弟子』の終幕は私の知る文学作品の中でも、純粋魔術として最も優れた文章である。そしてその書き出しは、私の個人的な体験と照らし合わせて、殆ど抗することが出来ぬ程に躍動しているのである。この書籍(書簡集)が今世紀最大の作家の一人であるダンセイニ卿の再発見に貢献できれば幸いである。
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■ラブクラフト
ダンセイニは民族的芸術家ではなく、普遍的・世界的な芸術家である。そして彼の卓絶せる特質は単なる奇怪趣味には非ずすべての生と現実との無意味さ、いかがわしさ、虚しさ、及び悲劇的な馬鹿馬鹿しさを見据える宇宙的視野展望に立った、神 にも紛う超個人的な幻視力である。
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■ジェイムズ・カズンズ
イェイツは自らの天才を燃え立たせる燃料をアイルランドのロマンスの森で拾い集めた。ダンセイニの方は両手で火をつかみとって、世界中を駆けめぐった結果、突然この世界からそれて「夢の元素」でできた王国へと失踪するのである。
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■リンカーター
指輪物語の作者でさえもダンセイニに匹敵する叙情詩、散文の歌うような美、豊かな尽きない想像力、異国風であり、信じがたい栄光の神々を呼び起こす名前を持ち得なかった。
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■アーシュラ・K・ルーグィン
ひとりの大人が大人たちのために神話を作っている。常識というものに対してひと言の弁明もせず、何の説明もなしに、わた したちをまっすぐ”内陸”に連れて行ってしまうのだ。理由はともあれ、あの瞬間は決定的なものとなった。わたしは、生まれ故 郷を見つけたのだ。
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■ジェイン・ヨーレン
ロード・ダンセイニは私たちすべての偉大なる祖父である。
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■稲垣足穂
明暗交錯の愛欄土、ダブリン西北約四〇キロ、タラの山近くに残っているダンセイニ城の西向きの居室からは、夕焼け空を背景にして伝説の山々が見え、幼い十八代城主に『世界の果』への夢想を培った。
このいささかも旧文学の手垢が付いていない、真に男性的な、アングロサクソン的新文学を、あえて諸氏に推薦する所以である |
■菊池 寛
近代劇の多くが、問題劇思想劇に堕し、芸術以外、多くの雑音を交えて居るに比し、愛蘭劇作家の二三の人のみは、純粋に芸術的である。ダンセイニの如きは、問題とか思想とか生活相を放れて、ただ珊瑚の鞭を手にして、思うままに天馬を駆って居る。
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■荒俣宏
ダンセイニは自分で体験した第一次世界大戦のフランス戦線における戦闘を語るにも、まるで神話時代の神々の闘いを描くように、美しい幻想小説には仕立てずにはおかなかった。(中略)小説やファンタジーのほんとうの力とは、このような真実の虚をついて裏側から心の光を照らすことにある。
幻想の力に身をまかせ星の彼方にまで連れていかれた快感は、いまも忘れられない。生涯最愛の作家。タルホも賢治も、愚生にはダンセイニの眷属としか思えない。
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■小谷真理
個性的で他の追従を許さない独自の存在を占めていたのが、ロード・ダンセイニであった。彼の特徴は民話・伝承、妖精物語 といった幻想的風物を使用して、現実世界=英国的現実とは異なった世界観を示していた当時の妖精物語のスタイルか飛翔し、宇宙的で壮大なスケールのヴィジョンに立った世界観・哲学観自身を打ち出したところにある。
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